「戦争とバスタオル」を読んでいたら、私も銭湯に行きたくなった。スーパー銭湯じゃなくて、富士山のペンキ絵が描かれたあの場所。あんまり大きくはない湯船に張られた熱々でたっぷりの湯に体を預けたい。
夕方、存在は1年以上認識しているけど、足を踏み入れたことがなかった近所の湯を目指した。
銭湯の名前は、太平館。駅から離れていて割とシャッターが多い商店街の中にある。シンメトリーのシャッターの奥に煌々と光る姿がなんとも奇妙で、異世界への入口かと感じる。この姿に畏怖を感じて、今まで足を踏み入れていなかったんだ。
勇気を振り絞って足を踏み入れる、「あぁ、めっちゃ昭和」。ある意味で異世界への入口。
入って左手の下駄箱が女用。右が男用。私はこういうとき、だいたい41番を選ぶ(家長昭博と旗手怜央の背番号)。
そばに、それぞれの脱衣所への入口がある。中に入ると期待通りの昭和感。番頭さんにお金を払うスタイルで、男女は分ける間仕切りがあるタイプ。
きれいに清掃された脱衣所で服を脱ぎ、浴室へ。浴室も上はあいているので、男女で会話ができる。私が入ったときも、おばあちゃんと孫らしき子どもが、男湯にいる父親らしき人と会話をしていた。「もう上がるよ〜」と父。「早い〜待って〜」と子。
ささっと髪と体を洗い、待ちに待った湯へ。濃いいい黒湯だった。ちょっと熱めの湯加減がちょうどよく、20分ほど浸かっていた。友達のことや仕事のこと、スリランカ行きのこと、いろいろ考えた。
どなたかのInstagram情報によると、富士山のペンキ絵はつい最近塗り替えられたばかりとのこと。中島盛夫という銭湯絵師の方が手掛けたらしい。職人。
どうやら常連さんが多いらしく、「あら、今日は早かったのね」「あなたが遅いのよ」なんていう会話が聞こえてきた。私も足繁く通えば、銭湯知人ができるだろうか。ちょっと憧れる。
コメント